「最初は不安だろうけど、私たちがフォローするから、自信持って。あとは実践あるのみ」
早速あの場に立つのかと思うと、緊張で足が震える。
「っと、その前に調理場に行っておこう」
白川さんに手を引かれ、調理場に入る。ケーキメインの料理だから、甘い匂いがする。
「店長、玲生が言ってた小野寺さん、ホール入ります」
「了解」
声だけで、店長の姿は見えなかった。それから心の準備をする間もなく、お客様の前に立つことになった。
笠木さんが接客をしていて、瑞希ちゃんたちは本当に待ってくれている。ほかにもお客様がいる。
「接客は玲生の真似で大丈夫。積極的にお願いね」
白川さんは私の背中を押し、厨房に戻った。
注文を聞き終え、空いた皿を運んでんいる笠木さんと目が合う。
「頑張れ」
すれ違いざまに囁かれ、不思議と勇気が出てきた。
「すみません、注文お願いします」
バインダーとペンを持って呼んでいるお客様の席に行こうとしたとき、白川さんの言葉を思い出した。
返事はしっかりする。
だけど、この場合どう返事すればいいのかわからない。
「はい、今行きます」
迷っている間に、笠木さんが返事をした。横を通り過ぎて行く。
……私、どうしてここに立っているのだろう。
◆
お嬢様の代わりに注文を受け、それを店長に伝える。
動けなかったからか、お嬢様は落ち込んでいるように見える。
「すぐに動ける奴はいねーから、そんな思い詰めた顔すんなよ」
お嬢様は泣きそうな顔で見上げてくる。
箱入り娘がいきなりバイトすれば、まあこうなるだろうな。
「私……呼ばれて、どう返事をすればいいのかわかりませんでした……」
たった一度でここまで落ち込むのか。真面目というかなんというか。
「里帆さんはなんて?」
俺の代わりに里帆さんがお嬢様をスタッフルームに連れて行ったのを見たから、里帆さんが仕事内容を説明してくれたはずだ。
これだけ真面目なお嬢様が、その説明を聞き逃したとは思えない。
「注文を聞いて、それを伝える。そして、料理を運ぶ、と……接客は、笠木さんを見て真似しなさいと言われました……」
お嬢様が動けなくなるのも無理ない。
それだけで、初心者が行動できるかよ。
「お客様が入ってきたら、いらっしゃいませ。席の案内は俺がするから、しなくていい。呼ばれたら、今行きます。お客様が帰るときは、ありがとうございました。挨拶はこんなもんだ」
普通に考えて、いろいろ店に行っていればわかることだろうが、お嬢様が行ってるわけない。
一から教える以外ない。
しかし俺の話を真剣に聞いてくれるのはいいが、表情が硬い。
俺はお嬢様の頬を両手で挟む。
早速あの場に立つのかと思うと、緊張で足が震える。
「っと、その前に調理場に行っておこう」
白川さんに手を引かれ、調理場に入る。ケーキメインの料理だから、甘い匂いがする。
「店長、玲生が言ってた小野寺さん、ホール入ります」
「了解」
声だけで、店長の姿は見えなかった。それから心の準備をする間もなく、お客様の前に立つことになった。
笠木さんが接客をしていて、瑞希ちゃんたちは本当に待ってくれている。ほかにもお客様がいる。
「接客は玲生の真似で大丈夫。積極的にお願いね」
白川さんは私の背中を押し、厨房に戻った。
注文を聞き終え、空いた皿を運んでんいる笠木さんと目が合う。
「頑張れ」
すれ違いざまに囁かれ、不思議と勇気が出てきた。
「すみません、注文お願いします」
バインダーとペンを持って呼んでいるお客様の席に行こうとしたとき、白川さんの言葉を思い出した。
返事はしっかりする。
だけど、この場合どう返事すればいいのかわからない。
「はい、今行きます」
迷っている間に、笠木さんが返事をした。横を通り過ぎて行く。
……私、どうしてここに立っているのだろう。
◆
お嬢様の代わりに注文を受け、それを店長に伝える。
動けなかったからか、お嬢様は落ち込んでいるように見える。
「すぐに動ける奴はいねーから、そんな思い詰めた顔すんなよ」
お嬢様は泣きそうな顔で見上げてくる。
箱入り娘がいきなりバイトすれば、まあこうなるだろうな。
「私……呼ばれて、どう返事をすればいいのかわかりませんでした……」
たった一度でここまで落ち込むのか。真面目というかなんというか。
「里帆さんはなんて?」
俺の代わりに里帆さんがお嬢様をスタッフルームに連れて行ったのを見たから、里帆さんが仕事内容を説明してくれたはずだ。
これだけ真面目なお嬢様が、その説明を聞き逃したとは思えない。
「注文を聞いて、それを伝える。そして、料理を運ぶ、と……接客は、笠木さんを見て真似しなさいと言われました……」
お嬢様が動けなくなるのも無理ない。
それだけで、初心者が行動できるかよ。
「お客様が入ってきたら、いらっしゃいませ。席の案内は俺がするから、しなくていい。呼ばれたら、今行きます。お客様が帰るときは、ありがとうございました。挨拶はこんなもんだ」
普通に考えて、いろいろ店に行っていればわかることだろうが、お嬢様が行ってるわけない。
一から教える以外ない。
しかし俺の話を真剣に聞いてくれるのはいいが、表情が硬い。
俺はお嬢様の頬を両手で挟む。