瑞希ちゃんの真似をして割り箸を割ろうとしたができなくて、由依ちゃんが躊躇いながら言った。

自分でやると断ろうと思ったけど、これではいつまで経っても食べられないような気がして、由依ちゃんに箸を渡す。

「お願いします……」
「おまかせあれ」

由依ちゃんは私の割り箸を受け取ると、簡単に割ってしまった。

「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」

私はそれを受け取り、麺を掴む。瑞希ちゃんのように吸うことはできなかったけど、まず一口食べた。

「美味しい……こんな美味しいもの、初めて食べました!」

二人は微笑んで私を見ている。

語彙力のない感想を言っただけなのに、どうしたのだろう。

「もっといろいろ食べさせたくなるくらい可愛い」
「円香ちゃん、私のやつも食べてみる?」

瑞希ちゃんはスマホを取り出して私に向けていて、由依ちゃんはれんげを渡そうとしている。

瑞希ちゃんは置いておいて、他の味も気になったため、由依ちゃんかられんげを受け取る。醤油ラーメンのスープをすくい、こぼれないよう左手を受け皿にして口に運ぶ。

「この味も好きです」
「私のもどうぞ」

豚骨ラーメンのスープも美味しくて、頬が緩む。

「どの味がよかった?」
「どの味も美味しかったです」

本当に選べなかっただけなのに、瑞希ちゃんは不服そうにしている。だけど、その文句を言葉にしてくれなくて、瑞希ちゃんはラーメンを食べ進めた。

何も言われなかったら、私から話すことはなく、私たちはほとんど無言で完食した。

会計を終え、店を出る。

「えん」

前を歩く瑞希ちゃんの声は、怒っているように聞こえた。

「また、ラーメン行こう。今度こそ、えんが好きだって思うラーメン見つける」

振り向いた瑞希ちゃんは、怒っているというよりも、悔しそうに見えた。

それほど、私が一番美味しいと思う味を見つけたかったということなのだろう。

だけど、そんなことよりも、また私とラーメンを食べに行ってくれるということが嬉しかった。

「はい。行きたいです」

私の返事に満足したのか、瑞希ちゃんは笑顔に戻った。

「次、どうする?デザートにははやすぎるよね」
「服見に行こう、服。えんで着せ替えしたい」
「いいね、それ。私もやりたい」

私の意見を最優先すると言っていたはずの由依ちゃんは、私に確認をせずに話を進めていく。

そして近くにあった服屋に連れ込まれ、一時間程度いろいろな服を着せられた。

更衣室のカーテンを開けると、二人が並んでたっている。

「うん、やっぱりふわふわ系が似合う」
「可愛いよ、円香ちゃん」

渡された服はこれからの季節にあう服だった。