日曜日、待ち合わせ場所に行く前に髪を染めた美容室に行った。

「髪、切っちゃったの!?」

ちょうど髪を染めてくれた美容師さんがいて、私の顔を見ると驚かれた。

鏡の前に座ると、美容師さんは切られた毛先を見る。

目の前の私は顔色が悪く、身支度はきちんとしていても、とてもこれから遊びに行く人の顔には見えない。

「これ……自分で切ったの?」

小さく首を横に振る。

「……そっか」

それ以上は聞いてこなくて、毛先を揃えてくれた。

「今日の服おしゃれだけど、玲生とデート?」

私を元気づけようとしてこの話題なのだろう。

「いえ……今日は、友人と遊びに」
「じゃあ、ヘアメイクもしてあげる」

されるがままで、完成した自分はここに来たときとまるで別人だった。

肩あたりで切りそろえられた髪はアイロンで巻かれていて、化粧は顔色の悪さを隠している。

「ありがとう、ございます……」

鏡を見つめながら、お礼を言う。

「どういたしまして。髪を染めたときより好感触だね。よかった」

美容師さんは道具を片しながら言った。

あのとき私がなにも言わなかったことが気がかりだったのか。

「……笠木さんの髪を見ていたら、私も染めてみたいと思ったんです」

美容師さんは片付けが終わったのか、鏡越しに私の目を見ている。

「だけど、何色がいいのか、どういうふうに染めるのか、全然決められなくて……」

だから、笠木さんに決めてもらった。

そして自分で選んでいないから、赤色に染まっている自分の髪を見ても、どう反応していいのかわからなかったのだ。

「実際に髪を染めた自分を見て、不思議な感覚でした。知らない自分に出会ったみたいで……どう言い表せばいいのか、わかりませんでした」

言い訳のようだと思った。だけど、美容師さんは私を見て微笑んでいる。

「そっか、そうだったんだね」

美容師さんはその場を離れると、私は席を立つ。そのままレジに向かう。

別の美容師さんが私の荷物を渡してくれて、財布を取り出した。

「やっぱりさ、お客さんの満足した顔が見たくてこの仕事してるから、気になっちゃったんだよね。小野寺さん、気に入ってくれなかったのかなとか、もっといいアレンジができたんじゃないか……とかね」

それを聞くと、本当に申し訳ないことをした。言葉に表せなくても、簡単な言葉でも、伝えるべきだった。

財布をカバンに戻し、まっすぐ彼女を見つめる。

「ありがとうございました」

昨日の分と、今日の分を合わせて礼を言う。

それだけで美容師さんが気にしていたことがなくなるのかわからなかったが、彼女が笑い返してくれたことで安心して店を後にした。