二年四組の教室の前に着くと、先生がドアを開けた。廊下から中が見え、生徒は全員座っていた。
「おはようございます。今日からこのクラスに新しいメンバーが加わります」
先生に紹介され、教室に入っていく私に、ほとんどの人が注目してくる。私は一歩教室に入り、丁寧に振り返ってドアを閉める。
先生に促されて教卓の隣に立つ。想像以上に教室全体が見えて、緊張が込み上げてくる。
私の話を聞こうと真剣な表情の人。近くの人と小声で会話をしている人。初めから私には興味がないのか、俯いている人。
いろいろな人がいて、私はなぜか安心した。
緊張を解すために、深呼吸をする。
「小野寺円香です。よろしくお願いします」
とてもシンプルな自己紹介になったけど、これ以外何を言えばいいのかわからなかった。頭を下げていたら、小さな拍手の音や歓迎の声が聞こえた。
そっと頭を上げ、今一度教室を見渡す。興味無さそうにしていた人も、手を叩いてくれている。
「小野寺さんの席は窓際の一番後ろよ」
先生に言われて、机の間を通って指示された席まで歩いていく。私が席に着いたことを確認した先生は、連絡事項を伝えると、教室を出ていった。
「小野寺さん、どこの高校だったの?」
早速、前の席の人が話しかけてくれた。
その子の友達が一人、その子の席にやって来る。他の人は自分の友達と話しながらも、ときどき私に視線を向けていた。
転校生というのは、どこでも気になる存在なのだろう。
だけど、私は彼女の質問に答えられなかった。私が今まで通っていたのは、お金持ちだけが通うような私立高校だった。
そんなことを言ってしまえば、家が裕福だと教えているようなもの。ただの一般人として接してほしいのに、言えるはずがなかった。
「あ、ごめん!名前言ってなかったね。私は坂野由依。それでこっちが」
「東雲瑞希」
私が答えなかったのを彼女たちのことを不審に思っているからだと思ってくれたらしく、二人は名乗ってくれた。
胸あたりまである髪をサイドでまとめているのが坂野さんで、ショートカットでクールなイメージなのが東雲さん。
一度名乗ったのにまた名前を言うのはおかしいと思い、どうすればいいのか迷って、頭を軽く下げた。
「小野寺さんって、大人しいんだね」
私がどれだけ無愛想な態度をとっても、坂野さんは話しかけてくれる。
これほど優しい人に対して言葉を返せない自分が、嫌になる。
「二年の二学期に転校してきたら、クラスに馴染めるか不安で緊張もするでしょ」
「おはようございます。今日からこのクラスに新しいメンバーが加わります」
先生に紹介され、教室に入っていく私に、ほとんどの人が注目してくる。私は一歩教室に入り、丁寧に振り返ってドアを閉める。
先生に促されて教卓の隣に立つ。想像以上に教室全体が見えて、緊張が込み上げてくる。
私の話を聞こうと真剣な表情の人。近くの人と小声で会話をしている人。初めから私には興味がないのか、俯いている人。
いろいろな人がいて、私はなぜか安心した。
緊張を解すために、深呼吸をする。
「小野寺円香です。よろしくお願いします」
とてもシンプルな自己紹介になったけど、これ以外何を言えばいいのかわからなかった。頭を下げていたら、小さな拍手の音や歓迎の声が聞こえた。
そっと頭を上げ、今一度教室を見渡す。興味無さそうにしていた人も、手を叩いてくれている。
「小野寺さんの席は窓際の一番後ろよ」
先生に言われて、机の間を通って指示された席まで歩いていく。私が席に着いたことを確認した先生は、連絡事項を伝えると、教室を出ていった。
「小野寺さん、どこの高校だったの?」
早速、前の席の人が話しかけてくれた。
その子の友達が一人、その子の席にやって来る。他の人は自分の友達と話しながらも、ときどき私に視線を向けていた。
転校生というのは、どこでも気になる存在なのだろう。
だけど、私は彼女の質問に答えられなかった。私が今まで通っていたのは、お金持ちだけが通うような私立高校だった。
そんなことを言ってしまえば、家が裕福だと教えているようなもの。ただの一般人として接してほしいのに、言えるはずがなかった。
「あ、ごめん!名前言ってなかったね。私は坂野由依。それでこっちが」
「東雲瑞希」
私が答えなかったのを彼女たちのことを不審に思っているからだと思ってくれたらしく、二人は名乗ってくれた。
胸あたりまである髪をサイドでまとめているのが坂野さんで、ショートカットでクールなイメージなのが東雲さん。
一度名乗ったのにまた名前を言うのはおかしいと思い、どうすればいいのか迷って、頭を軽く下げた。
「小野寺さんって、大人しいんだね」
私がどれだけ無愛想な態度をとっても、坂野さんは話しかけてくれる。
これほど優しい人に対して言葉を返せない自分が、嫌になる。
「二年の二学期に転校してきたら、クラスに馴染めるか不安で緊張もするでしょ」