「でも、元気そうでよかったよ。電話かけても切られちゃったし」
「悪かったと思ってるよ」
反省はしてないが。
「学校は来れそう?」
汐里さんは誰よりも早く、母さんの料理に手を伸ばした。
「……また倒れたりしたら嫌だし、今週は休もうと思ってる」
「ま、私もそれがいいと思うよ」
野菜炒めを口に含んで、幸せそうに笑った。
そして俺たちは三人で食卓を囲んだ。
◇
二日後の夕方、俺はスマホのバイブ音で目が覚めた。
あの日から、俺はほとんどを寝て過ごしていたのだ。
電話をかけてきたのは、汐里さんだ。
「……はい」
「玲生くん、ごめん!」
寝起きでいきなり大声を聞くのは、機械越しでもきつい。
すっかり目が覚めて、体を起こす。
「ごめんって、なにが?」
日が暮れた部屋は、電気をつけないと何も見えないくらい暗くなっていた。ベッドから降りると、電気のスイッチを押す。
「小野寺さんたちに、病気のことバレたかも」
「……は?」
汐里さんの言葉を、冷静に考える。
小野寺さん。つまり、お嬢様か。
バレたって、なにが?病気?それは、俺の?
「……なんで?」
「今日、小野寺さんがなんで玲生くんが学校に来ないの?って聞きに来て、いつも通り、恵実さんのお見舞いってことにしたんだけど……」
それは、俺が頼んだことだった。俺の休む理由聞いてくる人はいないだろうけど、病院で俺を見かける人はいるかもしれない。
だから、もし聞かれたらそういうことにしてくれ、と。つまり、病気のことは隠したかった。
そう、頼んだはずなのに。
「高校に通うことが玲生くんの夢だったって話したら、いろいろあって、玲生くんは病気なの?って」
そのいろいろが聞きたい。そもそも、どうして俺が高校に通うことが夢だったっていう話になったんだ。
いや、一つも間違っていないが。
入院が長引いたりすると、学校に通うことが出来ない日が多くなっていた。
俺は学校は嫌いじゃなかったから、少しでも長く学校にいたくて、無理を言って今の学校に通っている。
それを、汐里さんは知っていた。
「私……違うって言えなかった」
そこは言ってくれ。
「……嘘つくのが嫌だったとか言わないよね?」
母さんが入院しているってことは間違いなく嘘だから、その理由はありえないだろうけど。
「悪かったと思ってるよ」
反省はしてないが。
「学校は来れそう?」
汐里さんは誰よりも早く、母さんの料理に手を伸ばした。
「……また倒れたりしたら嫌だし、今週は休もうと思ってる」
「ま、私もそれがいいと思うよ」
野菜炒めを口に含んで、幸せそうに笑った。
そして俺たちは三人で食卓を囲んだ。
◇
二日後の夕方、俺はスマホのバイブ音で目が覚めた。
あの日から、俺はほとんどを寝て過ごしていたのだ。
電話をかけてきたのは、汐里さんだ。
「……はい」
「玲生くん、ごめん!」
寝起きでいきなり大声を聞くのは、機械越しでもきつい。
すっかり目が覚めて、体を起こす。
「ごめんって、なにが?」
日が暮れた部屋は、電気をつけないと何も見えないくらい暗くなっていた。ベッドから降りると、電気のスイッチを押す。
「小野寺さんたちに、病気のことバレたかも」
「……は?」
汐里さんの言葉を、冷静に考える。
小野寺さん。つまり、お嬢様か。
バレたって、なにが?病気?それは、俺の?
「……なんで?」
「今日、小野寺さんがなんで玲生くんが学校に来ないの?って聞きに来て、いつも通り、恵実さんのお見舞いってことにしたんだけど……」
それは、俺が頼んだことだった。俺の休む理由聞いてくる人はいないだろうけど、病院で俺を見かける人はいるかもしれない。
だから、もし聞かれたらそういうことにしてくれ、と。つまり、病気のことは隠したかった。
そう、頼んだはずなのに。
「高校に通うことが玲生くんの夢だったって話したら、いろいろあって、玲生くんは病気なの?って」
そのいろいろが聞きたい。そもそも、どうして俺が高校に通うことが夢だったっていう話になったんだ。
いや、一つも間違っていないが。
入院が長引いたりすると、学校に通うことが出来ない日が多くなっていた。
俺は学校は嫌いじゃなかったから、少しでも長く学校にいたくて、無理を言って今の学校に通っている。
それを、汐里さんは知っていた。
「私……違うって言えなかった」
そこは言ってくれ。
「……嘘つくのが嫌だったとか言わないよね?」
母さんが入院しているってことは間違いなく嘘だから、その理由はありえないだろうけど。