学校に来ないことが、よくあること?

そんなの、気にするなと言われるても気になってしまう。

先生の話が正しいのならば、これから先、学校に来ても笠木さんに会えない可能性が十分にあるということだろう。

それはとても、寂しい。彼に会いたいと思う気持ちだけが、募っていく。

「先生、笠木くんにもう少し学校に来るように言ってもらえませんか?」

自分勝手なお願いだということはわかっている。

今回のように、休まなければならない理由があるのかもしれない。それでも、学校でなければ彼に会えないとなると、何があっても来てほしいと思ってしまう。

「学校側としては来てもらいたいけど、玲生くんのお母さんは玲生くんのやりたいようにやりなさいっていう、放任主義だから……」

それが許されるのか。

学校に通わない。来ても、授業中は寝る。

どうして笠木さんは。

「アイツ、なんで学校に来てるんだろ。高校は来ても来なくてもいい場所で、来る気がないなら来なきゃよかったのに」

瑞希ちゃんの言う通りだ。それは由依ちゃんも思ったらしく、瑞希ちゃんに何も言わない。

私は笠木さんがこの学校に通っていなかったら出会えなかっただろうから、来なければよかったとは思わない。

だが、あまり来ない学校に席を置いている理由がわからなかった。

「夢だったんだよ。玲生くんの」

先生は何か昔を思い出しているのか、とてもつらそうな表情をしている。

私たちはその言葉の意味が理解出来ず、首を傾げる。

「高校に通うことが、玲生くんの夢だったの」
「……だったら、もっと真面目に通えばいいと思いません?」

瑞希ちゃんの厳しい言葉に、先生はぎこちなく笑う。

さっきからときどき見せる、このつらそうな笑顔は、何を意味している?先生は何を隠している?

「……通えない理由があるのですか?」

私が尋ねると、先生の表情が固まった。それから気まずそうに顔を背けた。

「……玲生くんに、言うなって言われてるから、ごめんね、言えない」

泣きそうな声で言われてしまうと、それ以上は何も言えなかった。

「学校に、通えないって……」
「じゃあ、笠木は何か病気とかってこと?」

私の疑問から、瑞希ちゃんがそんな結論を導き出した。

そんな、ドラマみたいな話があるのか。

気になって先生の言葉を待つが、先生は答えない。気まずく重い空気が流れる。

誰も動かなければ、話しもしない。その沈黙が、笠木さんが病気ではないかという仮説を肯定しているような気がしていた。