中に入っているものを取り出し、並べていく。

私はシートのそばに立ったまま、周りを見渡す。窓越しで見た以上に、ここにいる人が楽しそうに見える。みんな楽しそうに笑っている。

そんな様子を見ていたら、場違いのような気がしてきた。心から楽しんでいる人たちの中に、私がいてもいいとは思えない。

「先生、あの……」
「小野寺さん、これもういらないの?」

やっぱり帰りたいと言おうとしたが、それは遮られてしまった。

自分のものは並べ終えたらしく、先生は私の持ってきた箱を開けていた。

先生が指したのは、財布と携帯以外は入らないくらい小さい、ブラウンの肩掛け鞄だった。

その大きさに不便さを感じて以来、一度も使っていない。

「ええ、まあ……」
「これ、ブランド物だよね……?」

必要、不要で言ってしまえば、不要だから持ってきたわけで、ブランド物というのは関係ない。

「もらっても、いい……?」

賑やかな声に消されるような小声だった。

「大人としてそれはどうなんだよ」

荷物を取りに行っていた笠木さんは、戻ってくるなり冷たく言った。重そうな段ボールをシートに置くと、腰を後ろに曲げた。

「いや、だって、ほら!我慢はよくないって言うでしょ?」

焦っているような、言い訳をされた。
笠木さんは隣でため息をつく。

「そんなにいい物か?それ」
「わかってないなあ。可愛いでしょ?」

笠木さんは心底理解できないというような、軽蔑とも取れるような目をしている。

「玲生くん、それは人を見る目じゃない」

先生はそう言いながら、鞄を箱に戻した。

だけどどうしても欲しいのか、箱の中をじっと見つめている。

「残ったら、もらえば?」

笠木さんはため息混じりに言った。

「いいの?小野寺さん」

笠木さんに提案されて、先生は私のほうを見てきた。

先生が子供のように見えてしまって、思わず笑ってしまった。

「いいですよ」
「やった」

語尾に音符がついているのでは、と思うほど楽しそうに喜んだ。そして先生は欲しいと言った鞄以外を並べ始めた。

「いい大人が……」

笠木さんは呆れたように零し、靴を脱いだ。

「いつまで突っ立ってんだ、お嬢様。早く座れよ」

言われるがまま靴を脱ぎ、シートの上に正座する。土の感覚が直に伝わってくるようで、不思議な感覚だ。

すると、笠木さんの笑い声が聞こえた。

「お嬢様にはこういう場所、無縁だもんな。痛いか?」
「そ、そんなことありません!」

なんだか馬鹿にされたような気がして、無駄に大きな声で反論してしまった。それのせいか、笠木さんはさらに笑う。

笠木さんと話していると、どうしても感情のまま話してしまう。それが嬉しいような、だけどどこか罪悪感があるような気がした。

「あー!レオ!」