公園の入り口に『グリーンマーケット』と書かれた看板が立っている。緑公園の緑と、フリーマーケットを合わせてできた名前だろう。

専用駐車場に車を止めると、先生が先に降りた。私も続いて降りると、たくさんの笑い声が耳に届いた。

「小野寺さん、楽しそう」

後部座席のドアを開けながら言われた。

「え……そう、ですか……?」
「なんかね、目が輝いてる」

窓ガラスで顔を見るけど、よくわからない。
先生は小さく笑いながら、スマホを取り出して電話をかけ始めた。

「あ、玲生くん?到着したんだけど、荷物取りに来れそう?……あー、そっか。わかった。じゃあ、またあとで」

電話を切った先生に呼ばれた。私は対角線になるドアのところに移動する。

「玲生くん、場所取りしてて離れられないみたいだから、持てるだけ持って行こう」

先生はそう言いながら、片手で持てる程度の重さの紙袋を渡してくれた。そして先生は私が持ってきた箱を持った。

体でドアを閉めると、鍵を閉めた。

「……あ」

移動を始めるかと思えば、先生は私に照れ笑いを見せた。

「玲生くんがどこにいるか、聞くの忘れちゃった」

無邪気に笑う先生がなんだか可愛くて、私も釣られて笑ってしまう。

「小野寺さん、私の鞄からスマホ出してくれる?」

先ほど先生がどこにしまったかを見ていたため、小さな肩掛け鞄のポケットからスマホを取り出す。そして先生に言われる通りに電話をかけた。

「どうした?」

機械を通して聞こえてくる笠木さんの声に、急に緊張してきた。

「笠木さん、小野寺です。今、どちらにおられますか?」

そのせいか、いつもよりも早口になった。

「なんだ、お嬢様か。今どこにいる?」

笠木さんに目につくものを伝え、いる場所に近付く道順を教えてもらいながら、笠木さんを探す。

「小野寺さん、玲生くん見つけた!」

先生の視線の先を見ると、あの特徴的な金髪が目に入った。笠木さんに場所がわかったことを伝え、電話を切る。

「すごい荷物だな」

先生が持っている箱を受け取ってから、そうこぼした。

「小野寺さんが持ってきてくれたの。呼んでよかったでしょ?」

先生は靴を脱ぎ、レジャーシートの上に立った。

「……まあな」

笠木さんは小さな声で答えた。

「じゃあ、残りの分取りに行ってくる」

笠木さんは先生から車の鍵を受け取ると、そのまま駐車場に向かってしまった。

「先生、手伝いに行かなくてもいいのですか?」
「いいの、いいの。こういう力仕事は男に任せておくのが一番だから」

そして先生はシートの上で箱を開け始めた。