次に愛理さんを探す。
「愛理さん、少し出かけたいんだけど……」
「かしこまりました。すぐに準備いたします」
愛理さんが服などを用意しに行ってくれている間に、私は顔を洗った。
愛理さんが準備してくれた服を見にまとい、髪をセットしてもらうと、私は外に出た。
◇
向かったのは、恵実さんの家だ。緊張から、遠慮気味にドアを叩く。
「……はい」
出てきた恵実さんは、予想以上に弱っていた。
「円香ちゃん……どうしたの?」
頑張って笑いかけてくれる恵実さんを見ると、私まで苦しくなってくる。
だけど、今は悲しんでいる場合ではない。
「恵実さんにお願いがあって来ました」
そして私は頭を下げた。
「私をここに住まわせてください」
「え……」
恵実さんの戸惑った声が聞こえる。
当然の反応だろう。だが、引き下がることは出来ない。
玲生さんがいない場所で暮らしても、きっとつらいだけ。そんなことはわかっている。
だけど、どうせ玲生さんの夢を叶えるために生きるのなら、玲生さんを感じられる場所で生きていきたいと思ったのだ。
「お願いします。玲生さんのことを、忘れたくないんです」
顔を上げると、恵実さんは泣きながら私のわがままを受け入れてくれた。
◇
恵実さんと同居を始めて、三年の月日が流れた。今日は初出勤の日だ。
私は大学を卒業し、お父様の会社に就職した。
あの日から仕事の手伝いをしてきたから、緊張はない。ただあのころとは立場が変わってくる。
また逃げ出してしまわないよう、覚悟を決めなければ。
自分の顔を鏡で見ながら深呼吸をした。
身支度が終わると仏壇の前に正座し、鐘を鳴らす。
「おはようございます、玲生さん。今日の夜はピーマンの肉ずめを作りますよ。楽しみにしていてくださいね」
夕飯のメニューを伝えるのは、毎日の日課だ。
学生のうちに叶えられることは少なくて、私は料理スキルを磨くことしかできなかった。
初めは恵実さんに習いながらだったが、今では夕飯を任されるほどになった。
これで玲生さんの夢が少しでも叶っていればいいなと願うばかりだ。
「では、行ってきますね」
今日も玲生さんが最後のお願いだと言った笑顔で、前に進もう。
「愛理さん、少し出かけたいんだけど……」
「かしこまりました。すぐに準備いたします」
愛理さんが服などを用意しに行ってくれている間に、私は顔を洗った。
愛理さんが準備してくれた服を見にまとい、髪をセットしてもらうと、私は外に出た。
◇
向かったのは、恵実さんの家だ。緊張から、遠慮気味にドアを叩く。
「……はい」
出てきた恵実さんは、予想以上に弱っていた。
「円香ちゃん……どうしたの?」
頑張って笑いかけてくれる恵実さんを見ると、私まで苦しくなってくる。
だけど、今は悲しんでいる場合ではない。
「恵実さんにお願いがあって来ました」
そして私は頭を下げた。
「私をここに住まわせてください」
「え……」
恵実さんの戸惑った声が聞こえる。
当然の反応だろう。だが、引き下がることは出来ない。
玲生さんがいない場所で暮らしても、きっとつらいだけ。そんなことはわかっている。
だけど、どうせ玲生さんの夢を叶えるために生きるのなら、玲生さんを感じられる場所で生きていきたいと思ったのだ。
「お願いします。玲生さんのことを、忘れたくないんです」
顔を上げると、恵実さんは泣きながら私のわがままを受け入れてくれた。
◇
恵実さんと同居を始めて、三年の月日が流れた。今日は初出勤の日だ。
私は大学を卒業し、お父様の会社に就職した。
あの日から仕事の手伝いをしてきたから、緊張はない。ただあのころとは立場が変わってくる。
また逃げ出してしまわないよう、覚悟を決めなければ。
自分の顔を鏡で見ながら深呼吸をした。
身支度が終わると仏壇の前に正座し、鐘を鳴らす。
「おはようございます、玲生さん。今日の夜はピーマンの肉ずめを作りますよ。楽しみにしていてくださいね」
夕飯のメニューを伝えるのは、毎日の日課だ。
学生のうちに叶えられることは少なくて、私は料理スキルを磨くことしかできなかった。
初めは恵実さんに習いながらだったが、今では夕飯を任されるほどになった。
これで玲生さんの夢が少しでも叶っていればいいなと願うばかりだ。
「では、行ってきますね」
今日も玲生さんが最後のお願いだと言った笑顔で、前に進もう。