その言葉を最後に、玲生さんの手がベッドに落ちた。
隣の機械が一定の音で鳴っている。
「玲生、さん……?」
恐る恐る名前を呼ぶが、目を開ける気配はない。視界が滲んでいく。
「嫌です!目を開けてください、玲生さん!」
玲生さんの体を揺らすが、玲生さんは返事をしてくれない。
「私の料理を食べたいって……私といろんなところを旅したいって……そう言ったじゃないですか!」
ベッドのそばに座り込む。だけど、玲生さんの手は離さない。
「私と、結婚するって……」
どれだけ拭っても、涙は溢れ出てくる。
「嘘つき……」
だけど、玲生さんの言葉に従うような演技をした私も、嘘つきだ。
玲生さんを忘れるなんてできない。玲生さん以外の誰かと幸せになれるなんて思えない。
「私には玲生さんしかいないのに……」
涙は枯れることを知らず、ずっと泣いていた。
◇
真っ暗な自室で、ドアに背中を預けて座る。
玲生さんが死んだなんて、悪い夢に違いない。
……なんて、現実逃避をしようとするくらい、私は現実が受け入れられていなかった。
すると、小さくノックの音がした。返事をしなくても、ドアが開く。
「彼の葬式に行かないのか」
そこに立っていたのは、喪服を着たお父様だった。その格好、台詞にやはり玲生さんが死んだのだと思い知らされる。
「……行きます」
部屋のクローゼットの中に喪服があるため、お父様に背を向けて足を進める。その途中で、お父様が電気をつけ、部屋が明るくなる。
「下で待っている」
そしてドアを閉めた。
クローゼットを開け、喪服を手にするとまた涙が流れそうになった。
鼻をすすりながら着替え、玄関に向かう。そこにはお父様と柳がいたが、柳は何も言ってこない。
後から来た愛理さんと柳に見送られて葬式場に向かう。
汐里先生と見かけない男性が受け付けをしている。
「小野寺さん……」
私に気付いた汐里先生は名前を呼んだが、言葉が出てこないのか、口を噤んだ。そして受け付け台から離れ、優しく私を抱きしめた。
「……ありがとう」
感謝の言葉。玲生さんと再会して、玲生さんと過した中で、何度聞いただろうか。
「小野寺さんといた玲生君はとても幸せそうだった。ありがとう」
隣の機械が一定の音で鳴っている。
「玲生、さん……?」
恐る恐る名前を呼ぶが、目を開ける気配はない。視界が滲んでいく。
「嫌です!目を開けてください、玲生さん!」
玲生さんの体を揺らすが、玲生さんは返事をしてくれない。
「私の料理を食べたいって……私といろんなところを旅したいって……そう言ったじゃないですか!」
ベッドのそばに座り込む。だけど、玲生さんの手は離さない。
「私と、結婚するって……」
どれだけ拭っても、涙は溢れ出てくる。
「嘘つき……」
だけど、玲生さんの言葉に従うような演技をした私も、嘘つきだ。
玲生さんを忘れるなんてできない。玲生さん以外の誰かと幸せになれるなんて思えない。
「私には玲生さんしかいないのに……」
涙は枯れることを知らず、ずっと泣いていた。
◇
真っ暗な自室で、ドアに背中を預けて座る。
玲生さんが死んだなんて、悪い夢に違いない。
……なんて、現実逃避をしようとするくらい、私は現実が受け入れられていなかった。
すると、小さくノックの音がした。返事をしなくても、ドアが開く。
「彼の葬式に行かないのか」
そこに立っていたのは、喪服を着たお父様だった。その格好、台詞にやはり玲生さんが死んだのだと思い知らされる。
「……行きます」
部屋のクローゼットの中に喪服があるため、お父様に背を向けて足を進める。その途中で、お父様が電気をつけ、部屋が明るくなる。
「下で待っている」
そしてドアを閉めた。
クローゼットを開け、喪服を手にするとまた涙が流れそうになった。
鼻をすすりながら着替え、玄関に向かう。そこにはお父様と柳がいたが、柳は何も言ってこない。
後から来た愛理さんと柳に見送られて葬式場に向かう。
汐里先生と見かけない男性が受け付けをしている。
「小野寺さん……」
私に気付いた汐里先生は名前を呼んだが、言葉が出てこないのか、口を噤んだ。そして受け付け台から離れ、優しく私を抱きしめた。
「……ありがとう」
感謝の言葉。玲生さんと再会して、玲生さんと過した中で、何度聞いただろうか。
「小野寺さんといた玲生君はとても幸せそうだった。ありがとう」