東雲さんの言う通りで、いくつかのノートを貸してほしいと言おうとした。
「まあ、貸してって言われても、授業中寝てる私のノートなんて貸せないんだけどさ」
それよりも先に、東雲さんが笑い飛ばした。
私も坂野さんも拍子抜けし、苦笑する。
「もう、瑞希ってば、どうしてそんなに」
「はいはい、不真面目で悪かったね。自分に正直なんだよ」
「眠気に負けること?」
「いいや、勉強したくないこと」
坂野さんは顔を顰めた。
そんな二人のやり取りが微笑ましくて、思わず笑みがこぼれた。
すると、二人は私の顔を凝視した。
「小野寺さんが笑った……」
驚いているような、感激しているように見える。
「わ、私だって笑いますよ……?」
自分で言いながら自信がなくなったのは、最近心から笑った記憶がないからだ。
「なんていうか、笑ってはいるんだけど、作り物感があったんだよね」
自分に正直だと言っていた東雲さんが言うのだから、それだけ作り笑いをしていたのだろう。
その自覚はあったが、相手にわかりやすいほどだったとは思っていなかった。
環境が変われば少しずつ変われるのではないかと思っていたが、そう簡単にことは進まないらしい。
「えっと……私、悪いこと言った?」
今度は東雲さんを不安にさせてしまった。さっきから二人と話しては、不快な思いにさせている。
何を言っても失敗に繋がってしまうような気がして、ますます何も言えなくなる。
気まずい空気が流れる。
「……なんて、会ってまだ数時間だし、作り笑いとかあって当たり前か。変なこと言ってごめん」
東雲さんの言う作り笑いというものが、どういうものかよくわかった。気まずさが続いてしまう。
そんな状態で、授業が始まってしまった。
せっかく私に声をかけてくれる二人と、どれだけ雑談をしても距離が縮まらない。
私が距離というか、壁を作っているのだろう。寄り添ってくれたところを、瞬間的にシャッターを下ろしてしまう。
授業中ではあるが、窓の外を眺めてため息をつく。
ここに来た一番の原因は、そう簡単には消えてくれないらしい。あのときは環境のせいにしていたけれど、私にも原因があったのかもしれないと思うと、授業どころではなかった。
授業が終わって昼休みになった。
「小野寺さん、一緒にお昼食べよう」
どれだけ不快な思いにさせても、坂野さんは私に話しかけることをやめなかった。
お弁当を持ってきた東雲さんも何も言わないということは、私を歓迎してくれているということだろう。
その誘いを受けたいところだが、楽しい時間を私のせいで台無しにしてしまうような気がしてしまった。
「……ごめんなさい、用事があって……」
私はどれだけ嘘を重ねる気だろう。優しくしてくれる人に嘘をつくだなんて、最低だ。
「そっか、気にしないで。また今度一緒に食べよう」
坂野さんの笑顔から逃げるように、弁当箱を持って教室を出る。
「まあ、貸してって言われても、授業中寝てる私のノートなんて貸せないんだけどさ」
それよりも先に、東雲さんが笑い飛ばした。
私も坂野さんも拍子抜けし、苦笑する。
「もう、瑞希ってば、どうしてそんなに」
「はいはい、不真面目で悪かったね。自分に正直なんだよ」
「眠気に負けること?」
「いいや、勉強したくないこと」
坂野さんは顔を顰めた。
そんな二人のやり取りが微笑ましくて、思わず笑みがこぼれた。
すると、二人は私の顔を凝視した。
「小野寺さんが笑った……」
驚いているような、感激しているように見える。
「わ、私だって笑いますよ……?」
自分で言いながら自信がなくなったのは、最近心から笑った記憶がないからだ。
「なんていうか、笑ってはいるんだけど、作り物感があったんだよね」
自分に正直だと言っていた東雲さんが言うのだから、それだけ作り笑いをしていたのだろう。
その自覚はあったが、相手にわかりやすいほどだったとは思っていなかった。
環境が変われば少しずつ変われるのではないかと思っていたが、そう簡単にことは進まないらしい。
「えっと……私、悪いこと言った?」
今度は東雲さんを不安にさせてしまった。さっきから二人と話しては、不快な思いにさせている。
何を言っても失敗に繋がってしまうような気がして、ますます何も言えなくなる。
気まずい空気が流れる。
「……なんて、会ってまだ数時間だし、作り笑いとかあって当たり前か。変なこと言ってごめん」
東雲さんの言う作り笑いというものが、どういうものかよくわかった。気まずさが続いてしまう。
そんな状態で、授業が始まってしまった。
せっかく私に声をかけてくれる二人と、どれだけ雑談をしても距離が縮まらない。
私が距離というか、壁を作っているのだろう。寄り添ってくれたところを、瞬間的にシャッターを下ろしてしまう。
授業中ではあるが、窓の外を眺めてため息をつく。
ここに来た一番の原因は、そう簡単には消えてくれないらしい。あのときは環境のせいにしていたけれど、私にも原因があったのかもしれないと思うと、授業どころではなかった。
授業が終わって昼休みになった。
「小野寺さん、一緒にお昼食べよう」
どれだけ不快な思いにさせても、坂野さんは私に話しかけることをやめなかった。
お弁当を持ってきた東雲さんも何も言わないということは、私を歓迎してくれているということだろう。
その誘いを受けたいところだが、楽しい時間を私のせいで台無しにしてしまうような気がしてしまった。
「……ごめんなさい、用事があって……」
私はどれだけ嘘を重ねる気だろう。優しくしてくれる人に嘘をつくだなんて、最低だ。
「そっか、気にしないで。また今度一緒に食べよう」
坂野さんの笑顔から逃げるように、弁当箱を持って教室を出る。