「あ、あった……?」
企画営業部専用のスペースに、すっぽりとノートパソコンが立てかけられていた。
信じられない。どう考えたって誰かがここに置いたんだ……。
ふたたび、つぅっと嫌な汗が額を伝う。
この感覚、昔にも味わったことがある。
急に世界と自分が分立して、ひとりぼっちになるこの感覚。
「い、いやだ……! 思い出さない! 絶対! 負けない!」
私は勢いよく首を横に振って、過去の記憶に無理やり蓋をした。
そうだ、こんなことで、思い出すなんて情けない。
小学生の時にイジメられて、食べ物の味がしなくなったあのときのことなんて。
絶対に思い出したくない。戻りたくない。あの悲しみの中に。
〇
「チャーシュー麺大盛、チャーハン単品、あと焼ギョーザと、五目焼きそばください」
食堂のおばちゃんが、『そんなに食べられるのか』という目で見てきたが、私の怒りはギンギンに煮えたぎっていた。
私があそこで折れると思ったら大間違いだぞ、犯人め。
残念でした。大人になった私はたくさん食べて寝ればたいていのことは忘れちゃう構造になっているんだぞ。
私は両手にトレーを抱えて、食材をこぼさないよう、場所取りした席へとゆっくり向かう。
そして席に着いた瞬間、性能のいい掃除機もひっくり返るくらいの吸引力で、ずぞぞっと音を立ててラーメンをすすった。
「たまらん……美味しい……っ」
誰にも聞こえないくらいの声でつぶやき、私はもうひと口、大きく口を開けて麺をすする。
うん、大丈夫、ちゃんと美味しい。味がする。
ラーメンを飲み込んですぐにギョーザを食べて、その勢いでチャーハンをかきこむ。
これからラグビーの合宿があるんですか?と聞かれても仕方ないくらいの勢いだ。
結局パソコンを隠した犯人は分からなかったけれど、念のためパソコンに問題がないか確認してもらうこととなった。
祐川さんにはうっかり社内で置き忘れしてしまったことにして、詳細は話さなかった。
それにしても、最近社内で恨みを買った人などいただろうか……。
ミスで迷惑をかけてしまった人はたくさんいるけれど、こんな嫌がらせに至るまでの人なんて、私情の恨みがないといくらなんでも……。
そんな風に思っていると、ドスッという音を立てて隣の席に誰かが座った。
企画営業部専用のスペースに、すっぽりとノートパソコンが立てかけられていた。
信じられない。どう考えたって誰かがここに置いたんだ……。
ふたたび、つぅっと嫌な汗が額を伝う。
この感覚、昔にも味わったことがある。
急に世界と自分が分立して、ひとりぼっちになるこの感覚。
「い、いやだ……! 思い出さない! 絶対! 負けない!」
私は勢いよく首を横に振って、過去の記憶に無理やり蓋をした。
そうだ、こんなことで、思い出すなんて情けない。
小学生の時にイジメられて、食べ物の味がしなくなったあのときのことなんて。
絶対に思い出したくない。戻りたくない。あの悲しみの中に。
〇
「チャーシュー麺大盛、チャーハン単品、あと焼ギョーザと、五目焼きそばください」
食堂のおばちゃんが、『そんなに食べられるのか』という目で見てきたが、私の怒りはギンギンに煮えたぎっていた。
私があそこで折れると思ったら大間違いだぞ、犯人め。
残念でした。大人になった私はたくさん食べて寝ればたいていのことは忘れちゃう構造になっているんだぞ。
私は両手にトレーを抱えて、食材をこぼさないよう、場所取りした席へとゆっくり向かう。
そして席に着いた瞬間、性能のいい掃除機もひっくり返るくらいの吸引力で、ずぞぞっと音を立ててラーメンをすすった。
「たまらん……美味しい……っ」
誰にも聞こえないくらいの声でつぶやき、私はもうひと口、大きく口を開けて麺をすする。
うん、大丈夫、ちゃんと美味しい。味がする。
ラーメンを飲み込んですぐにギョーザを食べて、その勢いでチャーハンをかきこむ。
これからラグビーの合宿があるんですか?と聞かれても仕方ないくらいの勢いだ。
結局パソコンを隠した犯人は分からなかったけれど、念のためパソコンに問題がないか確認してもらうこととなった。
祐川さんにはうっかり社内で置き忘れしてしまったことにして、詳細は話さなかった。
それにしても、最近社内で恨みを買った人などいただろうか……。
ミスで迷惑をかけてしまった人はたくさんいるけれど、こんな嫌がらせに至るまでの人なんて、私情の恨みがないといくらなんでも……。
そんな風に思っていると、ドスッという音を立てて隣の席に誰かが座った。