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 二階に駆け上がって部屋に飛び込んで、ドアを閉めて鍵を掛けた。
 明かりも点けない部屋の、半端に開いたカーテンの隙間から、外灯の光が差し込んでいる。真っ赤なニーナが、窓際をぐるぐると飛んだ。

 あたしは部屋の真ん中にへたり込んだ。体に力が入らない。感情が収まらない。唇も手も、わなわな震えている。
 父と母に言葉をぶつけたときは、ものすごい熱と力が全身から噴き出すみたいだった。その反動なのか、今は、ぐったりして立てない。

 ずっと言いたかったこと。我慢し続けてきたこと。嘘偽りのない正直な気持ち。それをぶつけただけ。
 なのにどうして、少しもすっきりしないんだろう? どうして、泣きたいくらい情けない気持ちになっているんだろう?

 父も母も二階に上がってこない。来てほしいわけじゃない。でも、来るのが当然だと思っていた。一階からは、何の物音も聞こえない。
「やっぱ、どうでもいいんじゃん、あたしのこと」
 涙があふれないように、あたしはぎゅっと天井をにらんだ。
 そのときだった。

 ヴヴヴ、ヴヴ……ヴヴヴッ。
 机の上でスマホが振動した。あたしは、びくっと体をこわばらせた。

 誰から? というか、今のバイブのパターン、何?
 メッセージでもメールでも通話でもアラームでもない。お風呂やキッチン家電の仕事完了の合図でもない。

 ヴ、ヴヴヴヴ、ヴッヴヴ。
 謎の振動が続いている。不規則なリズムだ。明らかに、何のパターンでもない。

 薄暗がりの中、ディスプレイが光っている。その光に吸い寄せられるように、ニーナがふわりとスマホのそばに舞い降りた。ニーナの色が淡いピンクに戻った。
 声が、聞こえた。