「松本くんって何か夢みたいなものはある?」

 ふと尋ねてみたくなってわたしは松本くんを見上げる。

 互いに座っているとはいっても松本くんの身長だと自然とわたしが見上げる形になるのであって別にあざとい技に出ているわけではないですよ。

 しかし、松本くんはわたしの声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、すぐには返答しなかった。アイスを食べながら、じっと公園の生垣の向うだけをまっすぐ見据えている。

 そんな状態がしばらく続き、もしこれがラジオ放送ならばとっくの昔に放送事故だと思ったその時だった。
「まだまだいろいろ考えている最中だよ。特にこれってものがあるわけじゃない」

 考えた割にはこの答えかい! と思わず突っ込みを入れそうになりながら、ぐっと衝動を抑える。