見つめているうちに、わたしは段々といても経ってもいられなくなる。

 今すぐ足を上にあげ、家に向かって全力で走り、がむしゃらに今やらなければならないことに取り組まなければならないような気になって来る。

 でもその一方でわたしの身体は動かない。わたしの身体――特に目は、いつまでも松本くんの素振りの様子を見ていたいと思う。彼の全力のスイングを、一回でも多くこの眼に焼き付けたいと思う。

 家に帰りたい、でも帰りたくない――そんな気持ちと身体の狭間に立たされているうちに、ふと松本くんがスイングを止め、ゆっくりとこちらを振り向いた。