それじゃ、わたし次の授業生物なので――と言ってわたしが歩き去ろうとしたとき、ぼそっと小神が口にした一言も、彼が変人であるがゆえの大げさな表現だ――わたしはそのとき、そんな程度にしか小神の言葉を捉えていなかった。


――夢の中への深入りには注意ですよ、と。


 後になってから思えば、あの時すぐにその言葉の真意をきっちりと問いただしておくべきだったのだろう。

 どうしてわたしが夢を見ているとわかるのだ、と。

 どうしてわたしの眠りを、そんなに心配するのだと。

 だがその時のわたしはすべての疑問を、「小神は変人だから」とレッテル張りをすることできれいさっぱり無視してしまっていたのだ。そうやって自分の中にある疑問に蓋をしてしまっていたのだ。


◇◇◇