眠気のあまり、油断していたのだろう。曲がり角の奥からにゅっと小神の影が現れたのに気付かず、あやうく衝突しそうになった。忍びの末裔なのではないかと思うほど、気配を隠すプロフェッショナルである。

「見てたんですか?」

「そりゃ、あれだけ大きな欠伸ならどれだけ遠く離れた場所にいても見えますよ」

「……もうほっといて下さいよ、眠いんだから」

 そこでもう一度わたしは大きく欠伸した。

 小神は眉をひそめる。手を当てろといいたいのだろう。

「寝不足なんですか?」

 いつもよりやや深刻な声音で小神は問うた。そんなに心配するところじゃないでしょうが、ここ。

 やはり小神はどこかずれている。変人と言われる所以は、こういう細かいやり取りにも出てくる。

「まあ、そんなとこです」