何を隠そう、最近のわたしはどうやら寝つきが悪いというか、眠りがそもそも浅いようで、なんだか寝ている間も夢にうなされ、起きたときには何の夢を見ていたかはさっぱり忘れてしまっているが、寝不足感だけが残っている、といった出来事が頻発していた。

 春だから「春眠暁を覚えず」ってやつでしょ――だなんて友人たちにはからかわれたが、それならば毎年この時期にこういった眠気が襲っているはずだろう。これまで春に慢性的な眠気を感じたことなどない。

 眠りが浅ければ、肉体的に疲れるのではないかと思いきや、何日たっても疲労感は現れてこない。ただ浅い眠りと日中の眠気がある、それだけなのだ。

 これにはわたしは正直戸惑った。なぜなら、わたしはもともと寝つきがいいほうで、普段からあまり夢を見ることもなく、夜は熟睡するのが当然、といった生活を十七年近く送ってきたからだ。

 金曜日の朝、わたしが欠伸を繰り返しながら、教室のある棟と生物教室のある棟の渡り廊下を歩いていると、

「男性にせよ女性にせよ、欠伸をするときは手で隠した方がいいと私は思いますよ、星野さん」