間髪いれず、教室の各方面から、「僕も同じ意見でーす」「賛成―」といった声が上がりだす。

 司会者は数度頷いてから、

「――という意見がありますが、小神くん、そういうことでいいかな?」

 小神はゆっくりとした動作で松本くんを振り返った。そして彼と目と目をしばし合せてから、
「いいでしょう。それでは三年生の中から副委員長を選出しましょう」
と大人しく従った。

 そこで見た光景を、わたしはにわかには信じることができなかった。自分で自分の目を疑わざるを得なかった。

 というのも、その時の小神の口元には、どう見ても微笑としか表現できない表情が浮かんでいたのだから。

 いつも無表情の小神の顔の上に初めて見た表情の変化――あれをわたしはどういう意味で受け取っておくべきだったのか、その時は知り得るはずもなかった。