だからだろうか。
小神が発言した直後、教室のどこかから小さな、押し殺したような笑い声が――それも嘲笑と受け取れるような笑い声が漏れ聞こえてきた。
それも一人ではない。
少なくともわたしの耳には二人以上の人間が笑っているのが聞こえた。
どうしてだろうか。
わたしは小神のことが嫌いでならない。
小神の「私」という一人称にいら立った経験があることも認める。
だというのに、このクスクスという嘲笑を聞いていると、無性に腹が立つ。
それはおそらく、陰で小神に見えない所でなされる嘲笑だからだろう。
とはいえ、わたしも小神に隠れて友人に愚痴を言ったためしがあるのだから、彼らを非難する権利はない。そのことが、余計にもどかしい。
とか何とか考えていたのだが、ふと小神を見ると、まったく彼らの嘲笑なんて耳に入っていないようだった。しれっとしている。一人称を直すだろうか、とわたしが小神を見ていると、小神はこう言った。
「あまり固く考えなくてもいいと私は思うのですが、どうでしょうか」
……やっぱり、一人称は変えなかった。
小神が発言した直後、教室のどこかから小さな、押し殺したような笑い声が――それも嘲笑と受け取れるような笑い声が漏れ聞こえてきた。
それも一人ではない。
少なくともわたしの耳には二人以上の人間が笑っているのが聞こえた。
どうしてだろうか。
わたしは小神のことが嫌いでならない。
小神の「私」という一人称にいら立った経験があることも認める。
だというのに、このクスクスという嘲笑を聞いていると、無性に腹が立つ。
それはおそらく、陰で小神に見えない所でなされる嘲笑だからだろう。
とはいえ、わたしも小神に隠れて友人に愚痴を言ったためしがあるのだから、彼らを非難する権利はない。そのことが、余計にもどかしい。
とか何とか考えていたのだが、ふと小神を見ると、まったく彼らの嘲笑なんて耳に入っていないようだった。しれっとしている。一人称を直すだろうか、とわたしが小神を見ていると、小神はこう言った。
「あまり固く考えなくてもいいと私は思うのですが、どうでしょうか」
……やっぱり、一人称は変えなかった。