「原因はわかってるでしょうに……」

 伝わりそうにもないが一応口にしてみると、案の定小神は「心当たりがありませんが」などとすっとぼけた返答。この先輩は分かっていてわたしの嫌がることをしているのか、それとも本当に無自覚なのか、どっちだ。

「星野、椅子」

 すっとぼける小神にいらいらしていると、すっと横から椅子が出て来た。出してくれたのはもちろん、松本くんだった。口数は少なく、行動は男前。

 小神とは正反対の言動に、わたしはいたく感動し、感謝し、感涙した。

「ありがとう。どこかの誰かさんと違って、本当に松本くんは人間としてできてるよね」

 わたしは割と本気でその言葉を口にしたのだが、どうやら彼は冗談だと思ったらしく、口元にほんのりと微笑を浮かべた。

「小神先輩と同じ委員なのがそんなに嫌なのか?」

「もちろん! 心の底から嫌だよ!」

「おやおや星野さん。天の邪鬼的表現にしたって限度があるってもんじゃないですか。いくら精神修養を積んだ私とはいえ、さすがに今の言葉は――」

「黙ってください」