小神はギョーザを割り箸でひょいとつまみあげ、それを口に放り込んだ。

 こんな学食の冷凍ギョーザであっても、彼は一流中華料理店で食べているかのように満足そうな表情をしていた。

 ひょっとするとお育ちはよろしいのかもしれない。

 わたしは絶対に小神と同じメニューは嫌だったので、ハヤシライスを選んだ。

 小神とまったく違うメニュー(「中華」に分類されるメニューでさえ嫌だった)を選ぼうとするあまり、激辛であるともっぱら評判なハヤシライスをうっかり注文してしまったことを少し後悔している。

 久々に食堂を利用したから、そんな噂も忘れてしまっていた。とにかく辛い。

 ハヤシライスはもともとこんなに辛い食べ物ではないはずなのに。

 どうすればこれほどハヤシライスを辛くできるのだろうか。一口食べるたびに水を飲む必要がある。

 そんなわたしの様子を見てか、小神はぬけぬけとこう言い放った。

「辛そうですね、星野さん。

 なんなら、残り全部私が食べて差し上げましょうか? 星野さんの残り物なら苦ではありません」

「気持ち悪いこと言うな!」

 わたしは思わず、食堂内に響き渡るほどの大声でそれを拒絶してしまった。