昨日の一件でわたしの中での松本くんの評価はぐんと上がった。

 ただただ優秀で、自分さえよければそれでいいという人間なわけではなく、他人に対する思いやりがある人だってことがわかった。

 小神なんかとは比べること自体が失礼なほどに、松本くんは人格者なのである。

 ……小神だって一応わたしを志望校に合格させようという気持ちがあるという点では「一応」評価はしてやってもいいんだけれど、絶対に本人の前では礼は言わない。

 わたしも松本くんのような人間になれたらなあと思う一方で、どれだけ頑張っても、どれだけ精神修養を積んでもあの次元には到達できないんだろうなあというため息が漏れもする。

 と、そんなことを放課後のショートホームルームの時間に考えていると、

「はい、それでは今から今年度の各種委員を決めたいと思います」

という担任教諭の呼びかけが聞こえた。

 毎年恒例の委員会決定会議が始まった。

 わたしたちの学校では他の学校よりはやや遅めのタイミング、四月第三週水曜のホームルームで、学級委員や旅行委員といった委員を各クラスから男女一名ずつ選び出す。

 この時間は結構重要なものと考えている生徒は多い。

 誰だって人気のない委員にはなりたくないものだからだ。