何か言いたいことがあったのだろうが、そこで松本くんは言い淀んだ。視線をつま先に落とし、何やら逡巡しているようだ。さっきまでと少し様子が違う。

「どうしたの?」

 わたしは首を傾げた。何だか、わたしの中の松本くんのイメージとは少し違うな、と思いながら。寡黙だけれど、言うべきことはさっさと言ってしまう、そういう男の子だと思い込んでいたのだ。

「……いや、何でもない」

 そこで彼は、気持ちを切り替えたかのように、顔を上げた。

「俺にはわかる。お前は、たとえ他人より時間がかかったとしても、いつかは自分の意志で自分の未来を切り開くことができる人間だってこと」

 不器用に微笑みを浮かべてそう言う松本くんの姿を見た瞬間、わたしは思った。

――松本くんは、スーパー・ヒーローだと。