もちろん大嘘である。
冗談である。
言ったこちらが、言ったそばから吹き出しそうなのを必死に堪えるほどの、稚拙な嘘。
だというのに。
「え、マジ?」
マジレスかい。
松本くんは目を見開き、世にも信じられない話を聞いたとばかりに驚愕の声を上げた。
逆にこちらが何と答えたらいいか、わからなくなるじゃないか。
なんだか悪いことした気分になる。善良なクラスメートを陥れたかのようだ。罪悪感を感じてしまう。
「あ……いや、今の冗談だよ?」
慌てて冗談を撤回したわたしに、
「わかってるよ」
松本くんは至ってクールに答えた。
「ですよね……」
松本大輔、侮れない男だ。真顔で冗談を返すとは。