相変わらずの無表情で、アドバイスをくれた。

 教師ですら教えてくれない数学という教科の特性までこうしてすぐに口から出て来る時点で、彼の学力が高いことは明らかだった。

 今まで数学と英語や国語の教科間の攻略方法の違いなんて意識したこともなかったから、目から鱗だ。

 確かに松本くんの言うとおり、英語や国語は中学からの積み重ね、あるいは前の単元(関係代名詞だとか、上二段活用動詞の活用だとか)の内容を理解しないことには前に進めない。

 でも数学は例えば数Ⅰと数Aの間だとそれぞれの分野のつながりが英語や国語ほど強くないように思える。

 だって関数と数列って全然関係ないものね。

 関数ができなくっても数列の問題は解けたり、あるいはその逆っていうのは有り得る話だ――わたしはどっちも苦手だからお話にならないけど。

 そんなばかなわたしでも、納得。

「なるほどね。ありがと」

 言われるがままに、わたしはその参考書を棚から取り出した。