慌てて教室に戻り、生物のテキストと筆箱を引き出しから引っ張り出したところで、チャイムが鳴ってしまった。それから猛ダッシュでわたしは生物教室へと駆けだす。

 くそ、こんなことなら生物の用意をしてから昼ご飯を食べればよかった……。というか、こんなはめになったのは小神のせいだ、絶対に!

 などなど心の中でぶつくさ呟きながらわたしは廊下を走る。食べた直後に走るのは、とても、つらい。わき腹がじん、じん、じんと痛む。

 生物教室への階段を二段飛ばしに駆けあがり、教室のドアを開ける。

「かおるー、セーフだよ」

 友人がニヤニヤしながら、教壇を指さす。まだ先生は着いていないようだ。ほっと一息つく。

 二人が取っておいてくれた席に教科書を置くと、わたしは胸を押さえ、大きく息を吐いた。昼ご飯が逆流して口から飛び出そうである。

「小神先輩となにを話しこんでたの?」
「ほんと、仲いいよねえ」
と、二人はきゃっきゃしている。呑気なものだ。わたしがここへ来るまでにどれほど走ったことか、息遣いで察してくれ!



 椅子に座り、ふと斜め前の席に目をやると、そこには何事もなかったかのように悠然と座る松本くんの後ろ姿があった。

「な……何でわたしより早いの……」