あの上級生はいつも弁当を持って来ず、あの変人には場違いな食堂にいるらしい。それも一人きりで。友達いないんですか、と一度聞いてやりたい。
 
 某大学には「ぼっち席」なるものが登場したと噂に聞いているけれど、わたしたちの高校にはそういうサービスはまだ上陸していない。

 小神の昼休み中の行動を把握したわたしにもう恐れるものはない。食堂以外の場所に退避しておけば、少なくとも昼休みのうちは小神に会わずに済むということだ。これはわたしにとっては貴重な発見である。

 わが高校は最西端に校門、それから北と南に普段の授業を行う棟と特別棟・体育館が向かい合い、その間に中庭がある。そして敷地の東半分をグラウンドとプール、テニスコートが占めている。つまり中庭からは百八十度ぐるりとすべての施設があらかた見えるようになっている。

 中庭には大きな桜の木が一本どっしりと植わっていた。この学校が創設された年に植樹されたものらしく、幹の太さには貫禄を感じる。満開を少し過ぎた時期ではあるが、まだまだ美しい。