わたしの背後はと言えば。

「……」

 無音だ。

 何をしているのやら、さっぱりわからない。ちらっとさりげなく後ろを振り返ってみると、すでに教科書は開かれていた。

「どうかした?」

 急に振り向いたわたしを、怪訝そうに見返す松本くん。

「教科書ってどれのこと?」

「これだよ」

 わたしがあらかじめ用意していた嘘をつくと、松本くんは特に表情を変えることもなく、さっと教科書を持ち上げ表紙を見せてくれた。