「何も恥ずかしいものじゃないだろ」

 松本くんはたまりかねて吹き出してしまった。

「星野はどんな些細なことでも自分に嘘をつかない。そういう人間だとすぐにわかった。そんな星野と自分を比べて、眩しく感じたんだ」

 まさかわたしが誰かから「眩しい」と言われる日がこようとは、思ってもみなかった。少々照れくさい。

「でももう俺も俺に対して嘘はつかない。誰よりも自分に対して誠実でありたい。もちろん、野球は道具じゃないよ。俺の人生だ」

 松本くんは歯切れよくそう言い切った。

「星野がいつか選手として活躍する俺の名前を遠くにいたとしても聞くことが出来る、そんな選手になりたいと思う」

 その目は力強くまっすぐで、これからの松本くんの人生の動力源となるだろう強い光を宿していた。

 もう何も心配することはない。

 松本くんはやはり強い人だ。

 そして小神が言ったようにスーパー・ヒーローだ。そして彼はこれからさらにスーパー・ヒーロー度合いを増していくことだろう。

 わたしはそう直感しつつ、ファミリー・レストランを後にした。