わたしはそのことを簡単に松本くんに伝えた。

「そうか……」

 しばしの沈黙。

 松本くんはジュースのストローを手でもてあそびながら、視線を窓の外へやっていた。

 足を大きく広げ、肘をつき、時折ストローの先端を前歯で噛んだ。

 小神の気品あふれる作法とは大きく違う。

 しかしわたしはそんな松本くんの一つ一つの動作が嫌いにはなれなかった。

 別に礼儀作法通りのふるまいを誰もかれもが身に着けている必要なんてない。

 小神には小神の、松本くんには松本くんの、「らしい」動作があっていいんじゃないか。

 そんな風に考えながらじっと松本くんを見つめていると、

「ど、どうしたんだよ」

慌てふためいて松本くんは視線を落とした。そこで初めて、わたしは自分が異性に熱い視線を注いでいた事実に気づき、顔から首を火照らせた。

「松本くんからの感謝の気持ちは、わたしが小神に間違いなく伝えておくよ」

「そうしてくれるとありがたいな。本当は俺の口から直接言いたかったけど」