県外の甲子園常連強豪校、それも一度は入学を辞退した学校である私立O学園に編入の手続きを済ませた松本くんの表情は、今までとは打って変わって軽やかで生き生きとしていた。

 転校の報告のためにわたしを近所のファミリー・レストラン(以前一度だけ小神に連れられたのと同じ店舗だ)に呼び出した松本くんは、「一番に星野にこのことを伝えたかったんだ」と穏やかな表情でわたしに告げた。

 わたしは松本くんの新たな人生の門出を心から祝福した。

 松本くんは照れたような笑みを見せて、拍子抜けするほど両親があっさり転校を承諾してくれたこと、給付型の奨学金を先生に紹介してもらえたこと、転校先の高校ですでに新たな友人が出来たこと、高校の寮に入ることにしたが、そこが日当たりの良すぎる部屋であること、いかに野球に打ち込める環境が整った学校であるか――

 そんなあれこれを興奮した口調で語ってくれた。

 それは本当に松本くんにとって良かったことなのだとわたしは心の底から喜んだ。