松本くんの目が素早くわたしへと向けられた。

 その目は少し充血していた。

「あなたの言っていること、わたしにはよくわかる。夢を追いかけろなんて、お金持ちのきれいごとだよね。わたしだって庶民だからその気持ちはよくわかる」

 わたしは大きく息を吐いた。心臓がバクバクと暴れているのを、少しでも落ち着かせようとして。

「でもそれにしたって松本くんは傲慢だよ。

……松本くんは自分の家庭が裕福じゃないと思っているかもしれない。

 でもたとえ金銭的に恵まれていなかったとしても、松本くんはお金に変えられないものを持っている――それが才能だよ」

 松本くんは何も口にしなかった。

 わたしの言葉をしっかりと耳に入れてくれている。

 そんな確信があった。

 わたしはもう一度大きく深呼吸する。

 胸の高鳴りは徐々に落ち着きを取り戻してきている。