「あんたには俺の気持ちなんかわかるはずがない。
 小神先輩、あんた自分がどれだけ恵まれた人間なのか、自覚がないんだ。校内であんたは十分すぎるくらい有名な金持ちのお坊ちゃんだよ。だからそんなことを言えるのは金持ちだけだってことがあんたには分からないんだ。

夢を追いかけろ、夢をあきらめるな、失敗したって死ぬわけじゃない

――そんなこと、金持ちだけが口にすることを許されたきれいごとだ」

 うなるようにして吐かれた言葉。

 わたしはその時の松本くんの鬼気迫る表情に恐怖など感じなかった。ただただ、彼の主張の正しさに舌を巻くばかりだったからだ。

「野球をするのに恵まれた環境に置くためには金がかかるんだ。
 ナイター設備が整っていて、寮が用意されていて、身体を作るのに十分な食事が出てきて、遠方の強豪校との練習試合のために遠征をして――

 そういう環境があるのは金のかかる私立学校だけだ。両親は子供のために金銭面以外にもサポートが強いられる」