「ちょっと、何言ってんの!」

 言い過ぎでしょうが! わたしは小神を止めに入る。けれども小神はわたしの制止など耳にも入らぬ様子だった。

「今は江戸時代ではないんですよ? 職業選択の自由があります。あなたはただ野球とともに人生を過ごしたいだけだったのではないのですか? あなたは自分の気持ちに嘘をついている」

 小神がこれほど声を張り上げる光景を、当然それまでのわたしは目にしたことがなかった。

 首には血管が浮き出て、顔も上気している。

 興奮状態に小神が置かれることだって、あるのだ。

 わたしは彼がそれほどまでに誰かのためを思う熱血漢の側面を持っていることに、その時初めて気づかされた。

 松本くんはと言えば、彼も彼で芯のある男だった。

 小神の歯に衣着せぬ言葉の数々にひるむどころか、それまで腑抜けたようだった表情が一変、悠然と立ち上がり小神を睨み付ける。その目の光は獣のように獰猛だった。