そう、わたしはいたって消極的な人間に過ぎないのだ。

 松本くんの足元にも及ばない。

 わたしには本当に自分が望むものなんて何一つなかったのだから。

 いまだ渦巻くことを止めない地面に向けて、わたしは一歩踏み出した。

「松本くん聞いて!」

 わたしは喉が切れそうなくらい、思いっきりよく叫んだ。

 普段これほど大声を出す機会もないのだから聞こえなくても仕方ない、と思っていたのだが、なぜかその声はわたしが出した以上の音量で空間に鳴り響いた。

 そうか、ここがわたしの夢でもあるというのはそういうことなのだな、とわたしは感心する。

――そう、ここはわたしの夢だ。何も物怖じすることはない。

 わたしが主人だ。堂々とふるまえばいいのだ。

 自信がみなぎる。

 わたしは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

 すると、それまで曇天だった頭上がわずかではあるけれど、少し光が差し込んできたようだった。

 続けて叫ぶ。

「その渦の動きを、止めて! グラウンドを元に戻して!」

 できるかな、いや、できるに違いない。

 念じながら、信じながら、わたしは頭の中で渦が止まるところをイメージする。