他人の夢の中に入り込む能力、というけれど、それは一方では自分の意志では出入りできないことを意味する。いくらここから出ようとしたって無駄なことは分かっていた。

 松本くんの夢とわたしの夢とがつながり交差したこの世界から、どうすればわたしたちは出られるのだ?

 小神は冷静沈着な口ぶりでこう答えを提示した。

「『出る』ことなんてできません。先ほども言った通り、ここはあなたの夢の世界でもあるんです。あなたの夢のことはあなたが一番詳しいはずです」

 こう突き放されたって、わたしには解決案などわかるはずもなかった。

 こうなったらもう一度、原点に返るしかない。つまり、そもそもなぜ松本くんはわたしに憧れやうらやましさを抱いているのか。