わたしは背後の渦の中心で我を失いかけている松本くんを見おろし、それから小神の方へ向き直った。

 小神はしばらく握っていたわたしの手を放すと、混乱で身を振わせるわたしの肩の上に手を置いた。

「星野さん、落ち着いてください。ここは現実世界ではありません。松本くんの夢の世界であり、あなたの夢の世界でもあるのですよ」

 小神の言葉に、わたしは耳を疑うことしかできなかった。

「わたしの、夢……?」

「ええ。松本くんは、あなたの夢の世界と己の夢の世界を繋げてしまったのです」

「……どういうことでしょう?」

 わたしの頭はすっかり置いてきぼりだった。かろうじて返すことが出来たのもそんな言葉だけだ。

「以前、私はあなたにお伝えしたはずです。松本くんがあなたに抱く感情のことを

――あなたに抱く、憧れを。
 彼はあなたが自分の意思のままに行動する自由さを羨み、憧れ、妬んでさえいるのです。松本くんはあなたのそのような憧れる面、羨んでいる側面を自分の中に取り込もうとしているのでしょう」

「その怨念みたいなものが、わたしの夢を松本くんの夢の中に取り込ませた、と?」

 わたしが尋ねると、小神はくすりと笑った。

「決して『怨念』などというおっかないものではありませんよ」

「どうすればここから出られるんですか!?」