しかしそれを見止めた途端、わたしの胸の奥からぶわっと温かいものが押し寄せてきた。

 恐怖で震え上がり、冷え切った体に、生命のぬくもりが蘇る。

 自分で自分の目が信じられず、しかしそうは言っても今はつべこべ考えている場合ではないと思い、素直に小神の差し出した手を握った。

 小神の手は少しじっとりと汗ばんでいた。

――ひょっとして、わたしを救いだすために汗だくになって走ってくれたのだろうか?

 普段のわたしなら間違いなく「手汗気持ち悪!」と叫びだしていたところだが、今はそんな小神の汗すらありがたく感じ入っていた。感激にも似た心の震えを感じる。

 小神はそのままわたしを渦の外にまで引っ張り上げてくれた。

 細身に見えて、案外腕力があるものだ、と切羽詰まった状況であったにもかかわらず、感心する。

 渦の外にまで出てしまうと、さっきまで感じていた身の重さはどこかへと消え去っていた。