あれから二週間が経つ。

 小神のせいでわたしは嫌でも松本くんを意識せざるを得なくなった。

 松本大輔。

 わたしの出席番号のひとつ後ろの男。

 野球部で四番・エースを務めてきただけあって、体格がとてもいい。胸板が厚く、肩幅が広く、足が長い。背は小神の情報によると一七九センチらしいが、体格のせいかそれ以上に見える。ずっとグラウンドで走り回っているのだろう、肌も浅黒い。

 どこの学校でもそうだと思うが、四月初旬ごろはまだ出席番号順に座席が並んでいる。きっとそれは教師が名前と顔を一致させるためなのだろうが、それがわたしにとってかえって好都合だった。教師がプリントを配るたびにわたしは背後の松本くんにプリントを回し、しばしば手同士が触れ合う。その手がわたしの比にならぬほど大きくゴツゴツしている。