やはりそこは野球場だった。

 とはいえ、今日わたしたちがデーゲームを観戦したプロ球団が使用している球場ではない。

 わたしたちの高校のグラウンド。

 フェンスの向こうには見慣れた風景が広がっている。

 わたしはベンチにいた。グランドのフェンス際の木製のベンチだった。キャッチャーから見て右斜め後ろといったところだ。

 キャッチャーは松本くんだった。……松本くん? 彼ってキャッチャーだったっけ? と思い、慌ててピッチャーマウンドに目をやる。

 そこにいたのも、松本くんだった。

 奇妙さを覚え、ファースト、セカンド、ショート、サード……とぐるりと見まわして、卒倒しそうになる。

 全ポジションを、松本くんが守っている。九人の松本くんたちが、わたしの前にいたのだった。夢の中とはいえ、わたしはぞっとした。狂気じみたものを感じないわけにはいかなかったのだ。