どうしてもその疑問がわたしの頭から離れないのだ。

 松本くんにとって野球って何なのだろう?

 なぜ彼は野球部に所属し、野球をプレイし、野球を観戦するのか?

 受験と野球、どっちが大事なのか?

 そもそも野球を好きなのか?

 彼の人生においてどれほどの領域を野球が占めているのか?

 そんな種々の疑問がごちゃまぜになって、わたしは尋ねた――松本くんにとって、野球とは、何か。

「俺にとっての、野球? ……どうしたんだ、急に」

 虚をつかれたような顔つきになって松本くんは問い返す。その声は、ほんの少しだけ、震えていた。