「星野さん、このままのあなたの成績では、現在の志望校にはほど遠いですよ」

「わたしの志望校も知ってるの……？」

「ええ。私がめざしている大学とまさか同じ大学だとは思いもしませんでしたが。

　でもそれはそれで嬉しいです。もし私が合格し、その一年後星野さんが頑張って合格してくれれば、一緒に大学生活を満喫することができますから。

　リアル充実とはまさしくこのことです」

　うげ……なんだかものすごく志望校を変更したくなってきた。

　でも小神の言うとおり、今のわたしの実力では到底及びそうにもないレベルなのだから、小神と共に過ごす大学生活、というのは将来的にはありえないことかもしれない。

　実際小神がどれほど頭が良いのかは知らないけれど、この人、ガリベンそうだし。それ以外に取り柄もなさそうだし。

「私としては星野さんに何としてでも第一志望に受かってほしいんです」

　すべてのギョーザをさらえてから、小神は真顔で言い放った。塾の先生か、あんたは。学校の担任でも今どきそんなこと心の底から言ってくれる人はいない。

　わたしが発するべきことばを見つけられずに黙っていると、小神はこう静かに、しかし力強く続けた。

「だからこそ、松本くんの力が必要なのです」