その緊張のせいか、野球場についてからの出来事もとぎれとぎれにしか記憶していない。

 松本くんがきらきら輝く表情で一生懸命にルールを説明してくれていたのだけれど、全然頭に入って来なかった。

 なんせ、しょっちゅうファールボールが飛び込んでくるのだ。

 わたしの心は滅多に休まらず、ずっとどきどきしていなければならなかった。

 ファールボールが飛んでくるたびに松本くんに「大丈夫だから」と苦笑交じりになだめられる。

 いわゆる吊り橋効果であたかも自分が松本くんに恋しているものだと勘違い寸前のところだった。