どうしてわたしがそんな役回りとなってしまうのかよくわからなかったし、大体高校生の男女二人きりで野球の試合なんてまるでデートのようで恥ずかしいけれど、小神曰くこれが松本くんのためになるのだというから、わたしは渋々かつもじもじと、チケットを松本くんに手渡したのだった。

「年間指定席じゃん」

 わたしが差し出したチケットを見て、松本くんは心底驚いたようだった。

 その表情の中に、嬉しさが入り混じっているのをわたしは見逃さなかった。

「これ、俺にくれるの?」

 そう言ってわたしを見おろす松本くんの目は爛々と光り輝いていた。成績優秀な男子高校生から、一人の野球少年に戻ったかのような目の輝きに、わたしもちょっぴり嬉しくなる。

「わたしの知り合いの先輩がくれたの。でもわたしの友達に野球に詳しい人がいなくって、どうせなら野球に詳しい人と行きたいって思ったんだけど、一緒にどう?」