わたしが小神への底知れぬ恐怖で口をパクパクさせていると、彼は至って平然とした顔つきで尋ねた。

「星野さんは、わが校の誇るスーパー・ヒーローについて、聞いたことがなかったのですか?」

 さっきから恥ずかしがる様子もなくスーパー・ヒーロー、スーパー・ヒーローと連呼しているが、どんな気持ちでその言葉を使っているんだろう。

 小神の顔をちらりと覗き見るが、いたって平然としている。すると小神、すばやくわたしの視線をキャッチして、

「ん? 何でしょう。そんなに熱い視線で見つめられるとこれまで恋愛というものに興味をもったことのない私もさすがに――」

「小学校に戻ってもう一度国語の授業を受け直した方がいいんじゃないですか? し・ろ・い・目、の間違いですよ」

 思わず力んで右手に持ったガラスのコップを粉々に握りつぶしてしまうところだった、危ない。

 それにしたってさっきから頭がくらくらする。どうやらわたしのような凡人の頭脳では小神の言動を処理しきれないらしい。