ふと気付けば、若い男性アルバイト店員までもがふとサーブに駆けまわる足を止め、小神のハンバーグをすっと切る手つきをうっとりと見つめていた。

 そして少しでもその典雅さに近付きたいとばかりに、お冷の入ったボトルを手に、いそいそと我々の背丈九センチばかりのグラスに水を注ぎ込みに来た。

 大してどちらのグラスの水も減っていなかったけれど、そうせずにはいられなかったのだ。

 そして小神のナイフさばきに意識を取られるあまりだろうか、お冷を注ぐ手が震え、わたしのグラスから水が少し零れる。

「失礼しました」と僅かに上ずった詫びの言葉を入れると、静かに零れた水を拭き取り、彼本来の仕事へと戻って行った。

 少なくともここ数分の我々の周りで起こった出来事は、わたしの目にはそう映ったのだ。

 その一方でわたしはいかにも庶民といった箸使いで鯖の味噌煮を食す。

 チェーン店特有のしょっぱすぎる味付けが舌に染みた。

 何を隠そう、さきほどまで三種類のパフェを口にしていた身なのだ。

 あれだけのパフェを食べてもまだお腹はいっぱいではなかったけれど、舌が甘味に慣らされてしまった分、塩辛さが倍増だ。