小神のフォーク&ナイフ捌きは実に見事なものだった。

 図らずもわたしはその手つきに見とれる。

 その動作は小神の目の前にあるハンバーグがまさかたったの六百円(税込)とは信じられない雅やかさを備えていた。

 食事をする際の完璧なマナーとは、たとえファミリー・レストランの安価なメニューでも、老舗ホテルのお一人様一万円は下らない高級ハンバーグを食しているように見せるものなのかもしれない。

 しかも、舌を巻くべきはフォークやナイフの捌き方ばかりではなく、その表情だった。絶対においしくないことを臭わせる表情は見せない。食べ終えたとき小神の顔に浮かんでいるのは、満悦だけだ。

 学校の食堂しかりファミリー・レストランしかり、どうしてこんなにおいしそうに安い料理を上品かつおいしそうに食べることができるのだろうか?