「ここまでの話を整理してみたんですけど、わたしにはさっぱりです」
「口に食べ物を入れている時にしゃべってはいけません」

……すんません。

 小神はテーブルマナーにうるさいのであった。

 このファミレスに現在来ている客をざっと見まわしてみても、そのほとんどが食べながら大声で会話している。

 そのせいか、小神の周囲の雰囲気がかなり異質であるように見える。簡単に言うと、客層から浮いているということなのだが、そんな風に一言で言い表すことができるほど、自体は単純ではなかった。空間が歪んでみる、とでも言えばいいのだろうか?

 ぼんやり小神の手つきを眺めていると、実に庶民的なレストランのはずなのに、その輪郭さえも定かでなくなってくる。超現実的な感覚に呑み込まれそうになる。

 いかん、いかん。

 わたしは慌てて首を左右に振った。するとファミリー・レストランの輪郭が――現実の輪郭が立ち現われた。