六時間目のホームルームの時間。


「今日は、文化祭の出し物について詳細を決めていきます」


私は担任と入れ替わって教壇に立ち、クラスを見回した。


文化祭は夏休みが明けたらすぐだ。

うちのクラスは劇をやることになっているので、脚本作りから台詞の暗記、立ち回りの練習、道具類の準備などでかなりの時間がかかる。

一学期のうちに細かい役割分担をして、それぞれ動き出さなければいけない。


私は先生から預かった要項を見ながら、チョークで黒板に係を書いていく。


みんながざわざわと話し始めた。

いつになく興奮しているようだ。

たぶん、文化祭が楽しみなのだろう。


「ええと、まずは役者を決めたいんだけど」


大きな声を出して言っても、騒ぎ始めたクラスにはなかなか声が通らない。


「ごめーん、みんなちょっと聞いて」


張り上げた声がマスクの中にこもってしまったけれど、なんとかみんなが話をやめてこちらを向いてくれた。


「最初に、主役のお姫様と王子様を演ってくれる人を決めたいんだけど、誰か立候補してくれる人、いない?」


あたりまえだけれど、主役の二人というのは重要な役割だ。

台詞の量も多いし、その演技で劇の良し悪しが決まってしまうだろう。


その重圧があるせいか、それとも恥ずかしいからか、誰も手を上げなかった。